十和田観光電鉄 近代化補助で車両を一新

「鉄道ジャーナル8月号」の「いつも身近にあったふるさとの電気鉄道」より引用 

 国土交通省の近代化補助事業は、金額の1/3を国、1/3を県、1/3を事業者が負担することになっている。電鉄では1975年頃から苦しい中で重軌条化やPC枕木化、コンクリート架線柱化、検修工場の建て替えなどの設備改善を少しずつ進め、2000年度からは近代化補助を使い、 変電所の機械更新も実現した。しかし、全車両を置き換えるとなると桁が億の単位に跳ね上がる。このため話が止まってしまったのである。一方、その2000年にトップが代わり、抜本的にメスを入れるため鉄道の廃止とバス転換が考えられ、精査された。結果は次のようだ。
 主たる乗客は通学生徒で年間約50万人の輸送人員、1日片道にすると700人弱となる。鞄をはじめ荷物を携えた彼らを集中的にバスで運ぶと、三沢なり十和田市なりから片方向の輸送で最低6台のバスト6人の乗務員が必要とされた。一方、電車は両方向をあわせて4両と2人の乗務員で十分にまかなっている。冬場の安全性、定時性確保の問題も大きかった。鉄道を残したほうが経済的との結論を得た。
 しかし老朽化への対応に加え、地方私鉄の安全性向上の観点からATSがなければ近代化補助がつかないこととなり、次の判断としてバス転換か、鉄道のATS設置+新車導入が天秤にかけられたという。仮に現有車両を更新しても、土台がk鋼では10年も経ずに元の木阿弥≠ノなってしまう。電鉄はこうした事情をもとに地元市町村に理解を求めていった結果、今年度の新車置き換えによる鉄道存続に漕ぎ着けた。国と県からそれぞれ1/3を補助し、事業者分の1/3について全額を市町村が分担してもらえることになったという。