有田鉄道 存続求め住民ら始動 開業時のSL復活提言
2002年6月16日読売新聞 東京都の公園にある有田鉄道の初代蒸気機関車 廃線を予定している吉備町のミニ私鉄・有田鉄道を巡り、地 元の住民と鉄道ファンの団体が存続を求める活動を始めた。8 7年前に開業され、最近は赤字続きで会社側は営業継続を断念 したが、住民らは「町おこしの牽引(けんいん)車に」と、観 光資源として残すことを要望。開業時に活躍した初代の蒸気機 関車(SL)の復活を提言している。 ◆ミカン鉄道◆ 同鉄道は一九一五年(大正四年)、ミカンや木材を湯浅の港 へ運ぶために開業。戦時中に港付近の路線が撤廃され、ミカン 畑や水田を臨む吉備町内の東西五・六キロ間を結んできた。 ピーク時の六〇年代半ばには年間百六十万人が利用したが、 自動車の増加で利用者が減少。八四年に貨物輸送をやめ、九五 年には平日以外の運行を中止。昨年十一月には、一日五往復か ら二往復に。 ◆廃止申請◆ 会社側は今月下旬の株主総会で廃線を提案し、近畿運輸局に 鉄道事業の廃止を申請する予定。鉄道事業法に基づき、一年以 内に廃線となる。 廃線がうわさされた昨年から、沿線住民らは存続を模索。あ る商店主は「地方は車ばかりだが高齢者には維持費が大変。鉄 道にもう一度光をあてるべき」と訴える。また、「観光資源と して生かせば、高野山への観光客を引きつけることもできる」 と期待する声も。 ◆初代SL◆ 協力を申し出たのは、関東や近畿の鉄道ファン二十数人でつ くる「ふるさと鉄道保存協会」。昨年、開業時から約三十年活 躍した初代SLが東京都板橋区の公園で保存されているのを古 い雑誌で“発見”した。 公園には由来を示す看板などはなく、協会では交通博物館( 東京都千代田区)などで資料を集めて調査報告書を作成し、地 元の区長や町に提出した。 このSLは全長五メートル、八・六トン。一二年(明治四十 五年)にドイツで製造、輸入された。戦後まもなく同鉄道から 別の鉄道会社に譲渡され、七三年から現在の場所に。 ◆動態保存◆ 協会はこれまで、歴史的価値のある車両を購入、修繕し、動 く状態にする「動態保存」に取り組んできた。 同鉄道でも、車掌車やディーゼル機関車を金屋口駅に保管。 一昨年から同鉄道で開いている「鉄道まつり」で実際に客を乗 せて動かし、好評を博した。 京都市在住の医師で、協会の笹田昌宏代表(30)は「近畿 でSLを毎日運行している鉄道はない。しかも明治のものが動 くとなれば画期的なこと。『動く文化遺産』として、子どもら にも夢を与えたい」。 ◆受け皿が課題◆ 今後は、町や企業に対し路線や営業権の譲り受けを検討して もらうよう働きかけていくのが課題。これまで県外の大手タク シー会社に話を持ち込んだことも。 住民らは「ほかで例のない町おこしになるのでは。採算が合 うかどうか検討するプロジェクトチームを立ち上げるよう町に 要望したい」と話している。 希望者は初代SLの調査報告書をもらえる。問い合わせは、 笹田代表へファクス(075・791・8005)で。