2006年10月17日 茨城新聞

鹿島鉄道存続で知事 「地元もっと考えて」 地域振興の観点指摘
2006/10/17(火) 本紙朝刊 県内総合 A版 20頁
 鹿島鉄道(石岡−鉾田間二七・二`)の存続問題で、橋本昌知事は十六日の記者会見で、地域のまちづくり、地域振興という観点から鉄道存続について地元、沿線市がもっと真剣に取り組むべきとする考えを示した。

 橋本知事は、二〇〇七年度以降五年間に必要な公的支援額として同鉄道が提示している十一億円という金額に対し、「市町村にとって極めて大きく、県も今、大変な財政難にある」とし、「これからどういう努力をしていけば経営が成り立つのかということが大きなポイント」と述べた。
 その上で、昨年三月いっぱいで廃止された日立電鉄の駅前の現状など を挙げながら、「廃止すると駅の周辺はただの広場の脇にあるということでしかなくなり、高校生もだれも通らなくなる。土地の評価や商売への影響に駅の周辺の方や市町村の方の思いが至っているのかという気もする」と疑問を投げ掛けた。
 さらに、「県が考えるというより、地域振興という意味も含めて地元がもっと考えないといけない」と指摘した。

知事定例記者会見における発言要旨
2006年10月16日
茨城県HPより引用
○鹿島鉄道の存続問題について
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幹事社・朝日A:鹿島鉄道のほうの対策協議会,現在のところどういう状況なのかというのを,県が支援するのか,しないのか,どうかも含めて教えてください。

知事:県は,もちろん鹿島鉄道については何とか存続してほしいという強い期待は持っております。ただ,会社のほうが,現在の状況では,11億円という大きな金額の補てんが必要であるというようなことを言ってきている。あるいはまた,市町村でも出せる金額には限界がある。県としても,今,大変な財政難にある。こうした諸々の状況の中で,地元ではいろいろな活動がなされており,募金活動なども積極的に展開されておりますが,金額的にはまだまだとても十分な金額にはいかないといった状況にあります。
 そういう状況を見ながら,今,DMV,デュアル・モード・ビークルというのですか,こういったものがいつごろから使えるようになるかといったことについて北海道へ調査に行ったり,あるいはまた,航空自衛隊百里基地のほうとも,どういう利用形態が考えられるのだろうかとか,そういった検討を行っておりますが,まだ具体に決まってはおりません。また,いつ協議会を開こうかということは決定していないと聞いております。

幹事社・朝日A:決定していないということなのですが,10月中には開く中で。

知事:市町村としてどう対応するかといった状況もありますから,これから,多分,担当課の方で詰めていくことになると思います。

幹事社・朝日A:わかりました。

朝日B:親会社の支援がなかなか難しい中で,県としても何とか存続していきたいという立場にあると思うのですが,そのためには,自治体のほうの議論なんですが,県としてもこれまで以上に負担というか,支援策をとっていると思うのですが,存続させるという立場の中であれば,さらに,これまでの設備費とか,それ以上に運営費に関しても県として負担するという意向なんでしょうか。

知事:それは,どちらにしても,これから協議会の中で議論していくことになると思いますが,全体として幾らになるのかということが大変大きなポイントになってくると思います。今,急に増やされて11億円(の補填が必要)といっても,市町村にとっても極めて大きな金額になってきますので,地元がそういった負担に耐えられるのかどうかということもありますし,県としてもこれまで考えていたものよりはるかに多い負担になってきますから,それだけ出せるのかどうかということ,それから,出した結果,果たして5年後に(存続していけるかどうか)全然見込みがないというのでは,出してもしようがないではないかということにもなります。そういった予測もしなければいけませんし,これからどういう努力をしていけば経営が成り立つような形になるのかということが大きなポイントになってくると思います。それがないと,とりあえず出すからといっても,会社側もなかなか納得はしないのだろうと思っています。

朝日B:会社側が出している11億円というのは,自治体も県としても,そういうふうに受け止めているのですか。

知事:それも含めて,今,議論しなければいけないと思っています。

朝日B:もっと減らす余地があるのではないかということも。

知事:そうですね。そういうことも含めて。

朝日B:時間が限られていると思うのですが,単純に今の運行ということなのか,それとも,先ほど出たDMVみたいな新しい画期的なことによってその存在価値を見出せるということも考えているのでしょうか。

知事:JR北海道で来年春ぐらいからDMVの走行試験を始めるのだそうですが,ただ,それは17人乗りという小さいものですから,それを何両かつないだ場合にどうなるかといった課題がまだ引き続き残る形になってきます。そういった点も含めて,いつ頃だったら導入できるのか,それまで果たして会社が持ちこたえられるのかどうか。毎年毎年運行していくことによって経費がどんどんかさんで,会社としてもとても負担に耐えられないということになれば本体が危なくなってくるわけですので,そこまで果たして納得してくれるのかどうかといった問題も出てきます。
 それから,片一方では,余り補助が大きくなると,そんなに出す必要があるのかという意見,例えば,あそこについていえば,70万人,80万人ぐらいしか乗っていないわけですから,そうすると,往復を1人として考えると1日当たり約1,000人ちょっと,そのぐらいの数になってしまうので,その方たちだけのために何億円出すのだということにもなってくる。地域の振興とかいろいろ考えれば,私は何とか残したいとは思っていますが,片方ではそういう議論が出てくると思っております。
 それから,この間も日立電鉄の関係者から,電鉄線が廃止になって,駅前のお店がどういう状況になっているかをお聞きしたのですが,これまで駅前だということで,ある程度特別な場所として商売がやりやすかったわけですが,そういったメリットがなくなってきたことによって,その土地の評価がどうなるか,あるいはまた,商売がどうなるかといった面で,一般の人が考えている以上に大きな影響があるのだということを話しておられました。
 そういった点からすると,沿線の駅の周辺の方たちを含め,市町村の方たちがそこまで思いが至っているのかというような気もいたします。一旦やめた場合には,その駅の周辺はただの広場の脇にあるということにしかならなくなってくるわけで,高校生も誰も通らなくなってしまうわけです。バスがそこまで直接入ってくればまだ少しはメリットがあるかもしれませんが,今のように,バイク通学とか,あるいは送迎とかがかなり多くなってまいりますと,なかなかそこを使ってくれないでしょうし,バスの場合にも,そこで乗り降りするというよりはもっと(目的地の)近くへ行ってしまいますから,そうするとそこは空いてきてしまうということも出てきますから,かなり大きな影響を地域に及ぼすのだろうと思っております。
 そういうことも含めながら議論をしていく必要があるだろうと思っています。

朝日B:単純に鹿島鉄道だけではなくて,鹿島鉄道を含む地域振興の観点からも(鉄道の存続を)考えていくということですか。

知事:地元がそういうものを十分考えなければいけないだろうと思います。県が考えるというより,地元が,廃線になってしまったらどうなるのだろうかということをもっと考えないと(いけないと思います)。廃線になっても,それまでの利用者は他の手段で動いているわけですので,県としては影響はそんなに大きいわけではないのですが,地元のまちづくりという観点からすると,今までの中心地であった駅がなくなってしまうわけですから,商売などもどこに集中するかといっても,人が一番集まってくるポイントというのは確定しにくくなりますから,難しくなってまいります。そういったことも含めて考えていく必要があるのだろうと思っています。

朝日B:県も含めて,それ以上に,沿線地帯には,単純に存続だけではなくて,その地域を含めた面を積極的に。

知事:もっと真剣に地元振興という意味も含めて考えなくてはいけないなという思いを強く持っています。