2006年11月11日 神戸新聞
加西市と小野市を結ぶ第三セクター「北条鉄道」に、注目が集まっている。今月4日には加西市で、地方鉄道の存続と地域活性化を目指す「全国鉄道まちづくり会議」が開かれ、存廃に揺れる全国の地方鉄道関係者らが参加。加西市が公募する「ボランティア駅長制度」が、経済産業省や大手企業がかかわる「新日本様式」百選に選定された-との報告などに、聴き入った。北条鉄道が赤字経営からの“再生モデル”となるか。期待されている。(末永陽子)
晩秋の田園。一両編成のレールバスがのんびりと走る。鉄道会議のあった朝、ミニSL乗車などのイベントもあり、日ごろは空席が目立つ車内は、親子連れや鉄道ファンらでにぎわった。
会議は不採算などで廃線に追いやられる地方鉄道の存続を探るため、二〇〇四年に島根県で始まった。〇五年の長野県に続き、第三回大会を加西市が誘致した。
主会場の加西市健康福祉会館には、頑張っている地方鉄道の代表、「しなの鉄道」(長野)と「和歌山電(でん)鐡(てつ)」(和歌山)の関係者や国土交通省の職員らが出席。約二百人の聴衆の前で、基調講演やパネル討議があった。
席上、北条鉄道のイメージソング「歌う風」が初めて披露された。加西市出身の声楽家・阪上和子さん(49)=宝塚市=が、車窓からの四季をテーマに作詞作曲。自然豊かな沿線の魅力を、児童や女声コーラスグループが、美しい合唱でアピールした。
また、ボランティア駅長制度が、「新日本様式」百選に認定されたことも報告された。戦史研究家や僧侶、芸術家らが「駅長」になり、古い駅舎や周辺を舞台に花壇整備や写真展など多彩な活動を展開していることを紹介。「新日本様式」協議会(事務局・東京)から「古いモノを取り壊さずにアイデアで再生させている」と評価された-と説明した。
来春廃線になるという関東のある鉄道の男性職員(50)は「行政とボランティア、鉄道職員が三位一体となっており、活性化のヒントがあった」と話した。
一方、北条鉄道には厳しい現実もある。小野市へ通学する高校生らを中心に年間約三十万人という乗客数は依然横ばい状態。「イベントや駅長が話題になっても、年間約三千万円の借金解消の見通しは立っておらず、根本的には何も解決していない」と指摘する市民もいる。
会議に出席した和歌山大学経済学部の辻本勝久助教授は「北条鉄道は、鉄道ファンによる多彩なアイデアでソフト面からの再生を目指しているいい例。ただ、存続活動は継続が課題。今後は一般市民も巻き込んだ抜本的な改革が必要だ」と話していた。