2006年11月19日(日)の鹿島鉄道対策協議会
2006年11月20日の新聞記事
茨城新聞
鹿島鉄道存続を断念 対策協 支援本年度限り
2006/11/20(月) 本紙朝刊 総合1面 A版 1頁
■新たな事業者公募 代替バス運行協議へ
鹿島鉄道(石岡−鉾田、27・2`)の存廃問題で、沿線自治体と県で構成する鹿島鉄道対策協議会(会長・横田凱夫石岡市長)は十九日、石岡市内で第三回会合を開き、同鉄道への財政支援を本年度で打ち切ることを決めた。協議会が提示した来年度以降五年間で六億五千万円を限度とする財政支援に対し、鹿島鉄道の小野里忠士社長はあらためて廃線の意思を示した。協議会としては同鉄道の存続を事実上、断念した形だが、同鉄道に代わって運行を担う新事業者を公募することも決めた。今後は代替バス運行の協議に移るのと合わせ、存続に向け、いちるの望みが託された。
協議会では、先月末の第二回会合で提案された第三セクターや上下分離方式を含む五つの選択肢や支援額について各自治体が持ち帰り協議した結果が報告された。
支援の方式については第三セクターや上下分離など自治体が資産を保有しての支援でなく、現行と同様の補助金による経営支援で一致。支援額については、鹿島鉄道が試算した総額十一億円でなく、五年間で六億五千万円を上限とすることを決めた。
これに対し、小野里社長は「親会社(関東鉄道)の来年度以降の支援がなく、鹿島鉄道として六億五千万円の財政支援を受けても経営は難しい」と回答し、存続の意思がないことを示した。
このため、会長の横田市長が「残念だが鉄道を存続してもらうことは断念せざるを得ない」と述べ、協議会に諮り鹿島鉄道への財政支援打ち切りを決めた。
ただ鉄道の存続という観点から新事業者の公募を決めた。公募期間は二十七日から二週間とし@少なくても鉄道施設は事業者が所有するA第一種鉄道事業者になるB沿線市、県は今後五年間の運行に対し経営支援、近代化補助を行う−などを公募の条件にしている。
協議会では、代替バスの準備と合わせ公募を実施。「条件を満たした応募があれば審査を行い、結果を公表する」としている。また、「かしてつ応援団」や「かしてつブルーバンドプロジェクト実行委」などが要望していた利用者や住民に対する説明会の開催も日程を調整して実施する。
閉会後、小野里社長は「八十余年の歴史の中で廃線にすることは事業者としての責任は重い。新たな事業者の公募については条件次第で応じる可能性がある」と語った。
小美玉市の島田穣一市長は「経営不振の鹿島鉄道を存続させられなかったことは残念。住民の要望に応えられるよう今後の事業者公募に期待したい」と述べた。行方市の坂本俊彦市長も「廃線になれば行方市から鉄道がなくなる。公募に期待したいが、厳しいのが現状だろう」と感想を語った。
■解説 財政負担ネック
鹿島鉄道の存続への最大のネックは、沿線四市、県に重くのしかかった多額の財政支援だった。自立不能の同鉄道が来年度以降も運行するには当初、五年間で七億七千万円の支援額が必要だったが、車両の更新などに三億三千万円が追加、合計約十一億円が必要となり、頭を痛めた。
財政支援については、沿線四市と県を含め温度差があり、公的支援の配分方法によっては「協議会自体が空中分解しかねない」として先送りした。この間、水面下で横田会長らが親会社の関東鉄道幹部と交渉。鹿島鉄道への支援継続を求めたが、つくばエクスプレスの開業で打撃を受けた同鉄道は「自社の経営立て直しが最優先」として、二月の取締役会で決定した支援打ち切りの方針を変えなかった。
存続への選択肢としては第三セクターや上下分離方式なども検討。だが自治体の鉄道への経営参画は、将来的に膨大な不良債権を負いかねないとして選択肢から外した。また、年々落ち込む利用者に歯止めを掛けようと実施した幾つかの利用促進策も効果なかった。協議会としては最終的には、支出の削減を図っての六億五千万円を限度とする財政支援策を提案するにとどまった。
しかし、鹿島鉄道は「血税を無駄にするべきでない」(小野里忠士社長)と単独での鉄道経営を拒否。財政支援ありきの協議会との話し合いに齟そ齬ごそごを来し、結論を長引かせた。
この五年間で、沿線四市と県、関東鉄道は計約五億円を投入した。結局、自立再生と言った改善の見通しは立たず最後は「廃線やむなし」に傾いた。今後は残された新事業者公募に、協議会としてどう対応するか注目したい。(石岡支局・塚本宣夫)
茨城新聞 社会面
鹿島鉄道 存続再生ネットが応募 事業者公募 新会社設立へ
鹿島鉄道存続再生ネットワーク(長谷川功代表)は十九日、鹿島鉄道対策協議会終了後、石岡市内で記者会見し、新会社を設立し鹿島鉄道線の運行事業者に応募することを明らかにした。
長谷川代表は「応募の要件に、土地(線路)まで所有しなければならないのかなど分からない部分、あいまいな部分もあるが、必要な前提条件を明示しながら、自らが運行する第一種鉄道事業者として応募したい」と述べた。
一方で、運行事業者になるには鉄道会社の協力が欠かせないことから、「来年四月一日以降、最低一年間は鹿島鉄道に運行を継続してもらわなければならない。その間の赤字補てんに行政の協力も必要だ」と課題を挙げた。
同代表によると、会社設立に必要な資本金は約一億円。このうち数千万円分の出資の確約を支援者らから取り付けているという。さらに不足分は、沿線住民や全国の鉄道ファンに協力を呼び掛けて補う。存続に向けた沿線住民らからの寄付予約は同日までに約二千二百万円分集まっており、これらの資本金への充当も検討する。
出資などへの問い合わせは同ネットワーク(http://geocities.jp/kasimirai2006) рO29(23)0922へ。(仁平克幸)
常陽新聞
●鹿島鉄道、新たな運営主体公募
住民団体が新会社設立へ
鹿島鉄道対策協議会(会長・横田凱夫石岡市長)は十九日、今年度第三回協議会を石岡市旭台二丁目の「マリアージュ吉野」で開き、来年三月末での廃線を申請していた鹿島鉄道(石岡―鉾田、二十七・二`)について同社による運営継続を断念し新たな運営主体を公募することを決めた。
併せて来年四月以降、五年間の公的支援を六億五千万円を上限とすることも決めた。なお、バス代替輸送については四月からの実施に向けて準備する。
決定を受けてこれまで存続運動を続けてきた「鹿島鉄道存続再生ネットワーク」(長谷川功代表)は新会社を設立して前提条件つきで応募することを明らかにし、同時に新たに資本出資、鉄道経営者、専門家なども募集するという。
午後六時に始まった協議会は持ち帰り協議となっていた支援の選択肢について幹事会での結論を報告。上下分離方式、第三セクターについては高額な投資額などから協議会として選択は困難とした上で、これまで五年間続けてきた国補助も含めた支援の継続を提案し了承。前回示された十一億円から民間寄付、更新車両の新型から中古へなどで圧縮した六億五千万円を上限とすることに決めた。
当初、九月末までに結論を導く予定だったが、親会社の関東鉄道が完全撤退を表明する中で存続可能性を模索する作業が県、沿線四市間で続き、緊縮財政下での財政負担をめぐる調整や存続後の経営手法などで協議が難航。十月末の第二回協議会では結論を先送りし、結局、当初予定よりも二カ月近くずれ込んだが、今回、運営主体の公募の形で鉄道そのものの実質的な存廃論議は再び結論を先延ばしすることになった。
公募は二十七日から十二月十一日までの二週間。鉄道施設の所有を最低条件に今回決めた六億五千万円を上限とした支援とともに国による近代化補助も受ける。応募者については締め切りから約一週間、同協議会で審査し同協議会で公表する。
問い合わせは、石岡市企画課内の同協議会事務局(0299・23・1111内線223)まで。
朝日新聞
鹿島鉄道 運行者を公募/市民団体が名乗り
2006年11月20日
鹿島鉄道(石岡―鉾田)の存廃を沿線4市と県が話し合う鹿島鉄道対策協議会(会長・横田凱夫石岡市長)が19日、石岡市で開かれた。自治体側は来年度以降も財政支援を継続する意向を示したが、同鉄道側が存続を固辞したため、同鉄道への支援を打ち切ることで合意した。一方、同鉄道の代わりに運行を担う事業者を公募することを決め、改めて鉄道存続の道を模索し続けることになった。
同対策協議会では初めに、02〜06年度の5カ年計画で支援してきた方式と同様、来年度以降も5年間、6億5千万円を上限に支援を続けることで意見が一致した。
しかし、同鉄道の小野里忠士社長は、親会社の関東鉄道が支援を打ち切る方針に変わりがないことを報告したうえで、「(利用客の増加など)需要環境が伴わないといけないので、6億5千万円をいただいても適切なサービスが提供できない」と、存続の意思がないことを改めて表明した。
これを受け、自治体側は同鉄道への支援断念を了承。代替バスの準備を始めることにしたが、鉄道存続の可能性を探ろうと、同鉄道の代わりに鉄道運行を担う事業者を公募することを決めた。
公募は今月27日から来月11日まで、石岡市役所内の対策協議会事務局(0299・23・1111)で受け付け、1週間の審査を経て公表する。事業者が決まれば、自治体側は今後5年間、財政支援を行うが、鉄道施設は応募者が鹿島鉄道と交渉するなどして、譲渡を受けることが必要となる。
同対策協議会終了後、会長の横田・石岡市長は「従来の形で存続できなかったのは残念だが、今後の公募に期待したい」と語った。小野里社長は施設の譲渡について、「地域の足として必要な公共事業。残すとなれば全面的に協力したい」と話した。
◇ ◇
市民グループ「鹿島鉄道存続再生ネットワーク」(長谷川功代表)は19日、新会社を設立し、この日、同鉄道対策協議会が打ち出した公募に応募することを明らかにした。
長谷川代表によると、これまで利用者の立場から存続活動として、寄付予約や住民集会などを進めてきたことから、同鉄道の運行継続を目指し、協議会の公募締め切りの12月11日までに応募するとしている。
新会社は当面、1億円の運転資金を集める予定で、鉄道運行会社の許可を取ったり、社員教育をしたりする約1年間は、これまで通り鹿島鉄道に運行を依頼。そのため同鉄道と独自に交渉したいとしている。
資金のめどについて、長谷川代表は「企業や個人から数千万円の提供の申し出がある。寄付予約で約2200万円が集まっており、これも了解を得られれば組み込みたい」という。
出資金など応募の問い合わせは同ネットワーク(0299・23・0922、URL http://www.geocities.jp/kasimirai2006)へ。
◇ ◇
鹿島鉄道対策協議会が、鉄道事業者の公募を打ち出したことについて、沿線の中高生らでつくる「かしてつ応援団」応援団長の小川高校3年鬼沢友里さん(17)は「支援を打ち切るのは残念だが、事業者を募集するということに望みをかける。応援団としても、見つかるように努力していく。望みがあるので頑張りたい」と話した。
この日、石岡市のスーパーの勤務帰りに鹿島鉄道を利用していた小美玉市の倉持勝江さん(67)は、20年以上、時間帯に応じてバスと鉄道を併用してきたという。「バスは自宅近くを通っているが、土日は本数が少ない。バスより鉄道は速いし、安い。もし、廃線で代替バスになったら、どんな時間にどこを走るのかが心配だ。車を運転するのも危ないし、鉄道があれば便利なのだが……」と鉄道の存続に期待をかけていた。
讀賣新聞
鹿島鉄道対策協 支援打ち切り決定
新事業者を公募 地元団体応じる考え
来年4月1日での廃止届を出している鹿島鉄道の支援策を検討する「鹿島鉄道対策協議会」(会長・横田凱夫石岡市長)が19日、開かれた。対策協を構成する県と石岡など沿線4市は鹿島鉄道への公的支援打ち切りを正式に決め、同社に代わる新しい事業者を公募し、鉄道存続への道を探ることになった。既に地元民間団体が名乗りを挙げているが、4月1日までの時間が少ないことなど、楽観はできない。
この日の協議会では、鹿島鉄道の小野里忠士社長がまず「改めて検討したが、親会社の関東鉄道がつくばエクスプレス開通に伴う経営難にあるため、来年度以降、関東鉄道から支援を受けるのは不可能との結論に至った」と報告した。
そのうえで、「需要環境が整わない中で、(対策協から)財政支援を受けても鉄道事業はできない」と、重ねて4月1日で廃止する意思を示した。
対策協も鹿島鉄道による鉄道継続を断念した。これで、前身の鹿島参宮鉄道以来、80年以上続いてきた同社の鉄道事業撤退が固まった。
一方、対策協はなお存続の可能性を捨てず、新しい事業者の公募に乗り出す方針を打ち出した。新事業者が決定した場合、対策協は補助金による支援を継続する。金額は10月の会合で示した通り、来年度から5年間で計6億5000万円を上限に置くという。
公募期間は11月27日から2週間。鉄道施設は新事業者の所有とし、鉄道運行資格のある第1種鉄道事業者であることなどを条件にする。会合の最後に、横田会長は「存続へは、依然厳しい状況にある点は変わりはないが、可能性があることはやるべきと思う」と述べた。
事業継承については、これまで、民間人らで作る「鹿島鉄道存続再生ネットワーク」(長谷川功代表)などが中心となり、新会社の設立構想を発表している。
対策協の会合後、記者会見した長谷川代表は公募に手を挙げる考えを明らかにし、「新会社は資本金を約1億円とし、出資金を全国から募りたい。既に数千万円が集まっている」と話した。
ただ、ネットワークは第1種鉄道事業者の免許を持っていないなど、「引き継ぐまで、最低でも1年はほしい」と希望している。
毎日新聞
鹿島鉄道廃線問題:27日から2週間の期間、新事業者を公募
ー−対策協
◇応募ない場合、代替バスに引き継ぎ
来年3月での廃線を表明している鹿島鉄道(石岡−鉾田、27・2キロ)の存続策を県と沿線4市で検討してきた同鉄道対策協議会(会長、横田凱夫石岡市長)が19日夜、石岡市内で開かれた。同社単独での存続はあきらめ、新事業者の公募を実施することを決めた。27日からの2週間を期間として実施される。応募がない場合も想定して、早急に代替バスの準備を進めることが確認された。
県と沿線4市は、来年度以降5年間で6・5億円の支援を示していたが、同鉄道の小野里忠士社長はこの日、「支援をいただいても安全、快適な経営ができず、鉄道経営を断念せざるを得ない」と明言した。これを受け対策協は、これまでに同鉄道を引き継ぐ意思を示した団体もあったことから、新会社を公募することを決めた。ただ、この場合も自治体の支援が前提となる。
公募で新事業者が決まらなかった場合、対策協はこの日を最後に解散となり、来年4月1日以降の同鉄道沿線の公共交通は代替バスに引き継がれる。【清野崇宏】
東京新聞
鹿島鉄道 撤退を表明
鹿島鉄道線の路線を残す方策を検討する協議会メンバー=石岡市で
鹿島鉄道(土浦市)は十九日開かれた同鉄道対策協議会で、石岡−鉾田駅間の鹿島鉄道線について、来年三月末で鉄道事業から撤退する意向を表明した。これを受けて、県と沿線四市でつくる同協議会は、路線存続のため六億五千万円を上限に拠出し、新たな運営会社の公募に乗り出す方針を決めた。だが、新たな運営会社の選定は難航必至で、このまま廃線となる公算が大きくなっている。 (小沢伸介)
協議会では、存続の選択肢として第三セクター方式と上下分離方式は、自治体が資産を保有することになり、財政的に困難との見解で一致。これまで通り、経営支援の形で五年間に六億五千万円の拠出を全会一致で決めた。
これに対し、鹿島鉄道側は、安全運行と利用者への適切なサービス提供には、最低限でも十一億円の支援が必要であることを強調し、経営継続の断念を表明した。
小野里忠士社長は「八十四年の歴史ある鉄道の廃止は非常に重い責任を感じる。いろいろな方の支援にもかかわらず、鉄道の原点である地域住民の利用がなかった」と話した。
新たな事業者の公募は二十七日から二週間受け付けるが、具体的な条件は決まっていない。小野里社長は鉄道資産の譲渡について「有償か無償かは言える段階でない」と述べるにとどめた。
鹿島鉄道は、航空自衛隊百里基地(小美玉市)へのジェット燃料輸送が二〇〇一年に打ち切られて経営が悪化。乗客の減少傾向に歯止めがかからない上、親会社の関東鉄道がつくばエクスプレス(TX)開業で経営不振に陥るなど悪条件が重なった。
■利用者につのる危機感
会社側が経営からの撤退を表明したことで、来年三月末での廃線が現実味を帯びてきた鹿島鉄道。廃線となった場合、影響を直接受ける沿線の利用者の間では、危機感が高まっている。
「ほとんど毎日使っているから、なくなるとかなり困る。自転車で通うしかない」。石岡商業高校の女子生徒は、廃線になった場合の通学に不安を漏らした。
東田中駅近くにある同校は、生徒の三人に一人が鹿島鉄道で通学しており、利用率が沿線高校の中で最も高い。大沼諄校長は「もし廃止となれば中学生の進路選択に影響し、学校の死活問題にもつながりかねない」と危機感を抱いている。
一九八七年に分譲が始まり、間もなく駅が新設されたニュータウンの石岡南台では「鹿島鉄道がなくなるのは話が違う」と住民から反発の声が上がった。
南台は、駅からJR常磐線に接続する石岡駅までわずか二分という交通の利便性を売りにしていたからだ。
自治会長の一人は「住民は高齢化しており、鉄道がなくなったらどこへも行けなくなる」といい、協議会での検討内容や今後の見通しについて、住民への説明に追われているとい