2006年9月9日 茨城新聞

<4> 開かずの対策協議会 難問山積、迫る決断
2006/09/09(土) 本紙朝刊 総合1面 A版 1頁
 鹿島鉄道の存続問題を協議している沿線自治体と県で構成する「鹿島鉄道対策協議会」(会長・横田凱夫石岡市長)が五月十二日の開催以来、四カ月間開かれていない。今月五日の石岡市議会一般質問で、市議から「対策協議会がなぜ開かれないのか、はなはだ疑問だ」と指摘された。対策協は月一回のペースで開く予定だったが、突きつけられた難問に「公の場では話せない事もある」として協議は水面下での担当職員による話し合いに止まったままだ。

 対策協議会では鉄道の存続に向け、幾つかの選択肢について協議をしている。その一つが沿線自治体や県、国を含めた公的支援。鹿島鉄道には〇二年から五年間で約二億円の財政支援を続けているが、今後五年間存続させるためには十一億円の財政支援が必要となる。
 鹿島鉄道が現在の利用状況を試算しての数字で、五年間で経常損益(赤字)五億三千万円、安全設備に二億四千万円、さらに新車両二両分の三億三千万円が加算され計十一億円となる。
 鉄道存続に当たっては、公的支援のほかに新たな鉄道事業者の募集や第3セクターによる運営などの選択肢があり、これらについても協議会では検討している。
 鉄道経営を担う新たな事業者の募集では鉄道用地を沿線自治体が買い取り、運営を鉄道事業者に任せる「上下分離方式」も含むが、鉄道用地を買い取る場合、評価額で四十九億円にも上るという。
 また、県や沿線自治体が出資しての第3セクター方式では、鹿島鉄道のこれまでの借入金約七億円の清算も必要となる。対策協議会の事務局(石岡市)では「果たして投資するだけの価値があるのかどうか。今後の収益性や費用対効果など、整合性を含め幾つかの選択肢を模索している」と話す。

 「一番いいことは、鹿鉄がもう一度やる気になって廃線届を取り下げることだが…」(横田市長)。今年三月に廃線届を関東運輸局に提出した鹿島鉄道は、今のところ廃線届を取り下げる意向はないようだ。
 廃線届の直接の要因は、親会社の関東鉄道(本社・土浦市)からの支援打ち切りだが、鹿島鉄道をここまで追い込んだのは一向に下げ止まらない利用者数だ。
 その顕著な理由が輸送密度(一日一`当たりの平均乗車数)。JRは二千人弱を損益分岐点として設定し、廃線の対象としているが、鹿島鉄道の輸送密度は昨年度五百五十六人、五年前に比べ約百八十人と年々落ち込んでいる。昨年三月いっぱいで廃線になった日立電鉄の輸送密度は廃線時、千五百人だったというから鹿島鉄道の自力での鉄道経営がいかに苦しいかがうかがい知れる。

 県主導で八月には対策協議会として利用促進に向け、沿線にチラシやポスターを配布するローラー作戦や懸賞付き通学定期券、沿線高校長との意見交換などさまざまな取り組みを実施した。しかし、恒常的な利用増につながる効果は今のところ現れていない。
 廃止となれば、代替バスの運行計画などの準備が必要になるため今月中にも存廃問題に結論を出してもらいたいとする事務側。「最後は沿線四首長の政治決断しかない」としているが、たとえ存続させるにしてもあまりにも膨大な費用に四首長とも「イエス」と快諾できない悩ましい現状がある。

【写真説明】
4カ月間、開かれていない鹿島鉄道対策協議会=今年5月12日、石岡市のマリアージュ吉野で