2006年10月24日 朝日新聞

鹿島鉄道 地元の負担増どう判断

2006年10月24日

廃線の危機にある鹿島鉄道=行方市の桃浦駅で

 廃線か、存続か揺れる鹿島鉄道をめぐり、沿線4市(石岡、小美玉、行方、鉾田)と県が話し合う鹿島鉄道対策協議会(会長・横田凱夫石岡市長)が、31日に石岡市で開かれることが23日、決まった。協議会の開催は5月以来で、存続を望む4市は県の支援拡大に期待を寄せるが、橋本昌知事は会見で「(経営改善の)見込みがなければ出しても仕方がない」と述べ、慎重な姿勢だ。地元では「いい材料がない」と、廃線を受け入れる空気も漂う。(小林豪、木村聡史)
 鹿鉄は既に来年3月での廃止届を国交省に提出しており、自治体が今年度で支援を打ち切れば廃線となる。期限まで半年を切り、協議会は今回の協議会で結論が出なくても、関鉄グリーンバス(本社・石岡市)に代替バスの準備を指示する構えだ。
 02〜06年度の5年間、4市と県、国、親会社の関東鉄道(本社・土浦市)は鹿鉄に対し、赤字補填(ほ・てん)にあてる「経営分」と設備投資にあてる「近代化分」の計4億4500万円を支援してきた。来年度から5年間は、累積赤字や車両の老朽化などのため、2・5倍の計11億円が必要とされる。
 一方で、関鉄は、負担してきた「経営分」の半額と約2億円の人件費の支援打ち切りを決定。このため、存続の場合、4市の負担割合は33%から60%に、金額は4・4倍の6億5900万円に跳ね上がる。
 百里飛行場の開港を09年に控え、アクセス鉄道として鹿鉄の存続を望む島田穣一・小美玉市長は「親会社が1円も出さないのでは、議会や市民への説明が難しい」と、関鉄への不満を隠さない。しかし、つくばエクスプレスの開業で高速バス事業が打撃を受けた関鉄としては「自社の経営立て直しが最優先」との立場で、打ち切りの方針を変える意思はないという。
 4市が期待するのが、県の負担割合の拡大。県はこれまで「近代化分」の半分を負担してきたが、4市だけで賄う「経営分」にも支出して欲しいというのが地元の本音だ。
 しかし、民間企業への経営支援に県は慎重な姿勢を崩さない。県内では鹿鉄以外にも、湊鉄道などの廃線問題が控え、今回、県が経営分の支出に踏み切れば、今後の公的支援のあり方に影響を与えかねないからだ。
 橋本知事は16日の定例会見で「これからどういう努力をしていけば経営が成り立つのか。それがないと、(金を)出しても、会社側もなかなか納得はしないだろう」と発言。沿線自治体が有効な再生策を示すことが先決との考えだ。
 実際、この5年間で4億円以上をつぎ込んでも、利用客が増える兆しはない。昨年度は77万5千人で、この8年間で3割減少。今年4月に通学定期券の2割引きサービスで起死回生をねらったが、月別で利用客が増えたのは8月(前年同月比9・5%増)だけ。4〜8月では前年比1・6%の減少だった。
 鹿鉄の入江文夫総務部長は「仮に存続しても、5年後にまた同じ問題が出てくる。我々としては自治体に買い上げてもらって第三セクターにするなど、経営母体の変更を含めて検討して欲しい」と話している