2007年3月18日 茨城新聞
茨城交通湊線 存廃岐路、残り2週間 事業者沈黙展望開けず |
2007/03/18(日) 本紙朝刊 総合1面 A版 1頁 |
■地元、利用増訴え ひたちなか市内を走る茨城交通湊線の存廃問題は、茨城交通(水戸市)が国に対する同線廃止届を提出するか否かの態度を明確にしないまま、節目となる年度末まで残り二週間を切った。関係者は一様に状況の厳しさを指摘し、存続への展望が開けないのが現状だ。地元の「おらが湊鐵道応援団」は実行委員会を始動させ、住民意識の盛り上げに躍起。市議会も同問題に関する特別委員会を設置した。さまざまな動きが交錯する中、沈黙を守る同社がどのような判断を下すのか、ギリギリの段階を迎える。 二月七日。市が昨年六月に設置した「湊対策鉄道協議会」の会長を務める本間源基市長は存続要望書を手に、都内の整理回収機構と大手金融機関を訪れた。 「茨城交通が湊線をやめれば、バスなどにも影響が出る。地域の中での信用という部分で、(住民は)バスに乗るのか。そういう面も考えたらどうか」 本間市長は、同社の将来への悪影響にまで踏み込み、再建計画の見直しを鋭く迫った。だが、相手方は押し黙ったままだった。 二月下旬の地元金融機関との話し合いでは、再建計画修正にやや前向きの姿勢が示されたかに見えたものの、その後、要望に対する応答は何ら寄せられていない。 「要するに損得の話で、物差しが違う。公共交通機関の使命などと言っても通用しない」。関係者はため息交じりに漏らす。 債権者の金融機関が承認している再建計画には「二〇〇八年三月までに不採算部門からの撤退」が明記されているとされる。 銀行OBは「財政支援などの話をする段階は本来は(再建計画策定の)前にあったはず。今となっては見直しは難しい」と指摘する。 巨額の有利子負債を抱えた茨城交通が会社本体の経営再建を最優先せざるを得ない事情があるとはいえ、市側には具体的な支援要請がないまま手足を縛られた再建計画が策定されたことへの不信感が募る。 高齢化社会の一層の進展による公共交通機関利用への回帰や、常陸那珂港からの貨物輸送の可能性など、市は中長期的な視点での検討を呼び掛けるが、「公益」は事業者にも金融機関にも容易に響かない。 「いきなり廃止になることを危惧(きぐ)している」。今月二日の定例会見で本間市長は、存続条件を一切提起せず支援要請すら行わない同社の対応に不満をにじませ、「今のところはこちらからのラブコール」と自嘲(じちょう)してみせた。 那珂湊地区と沿線を中心に立ち上げられた地元応援団の実行委員会初会合が二月二十二日、ひたちなか商工会議所那珂湊支所で開かれた。 佐藤彦三郎団長は力を込めてメンバーを鼓舞した。「九十三年の歴史があるものをなくしたら二度と復活できない」 高齢者や高校生らの生活を支える鉄道がなくなることに対して、地元の不安は強い。一方、利用客数が減少し続けているのは事実で、利用増への反転が存続には欠かせない。 実行委の中で、県交通対策室の田中豊明室長は「利用するという形で存続を図っていく。住民の皆さんに乗ってもらうという努力は永遠に続く」と訴え掛けた。 応援団の事務局を務める同支所の赤沢勇支所長は「仮に廃止届が出てもあきらめない。そこからが勝負だ」。 勝田と那珂湊を結ぶローカル鉄道は今まさに、存廃の岐路に立つ。 |