2006年9月16日 毎日新聞
◆かみ合わない存続活動
◇深まる焦りと欠ける信頼感−−孤立する「かしてつ応援団」
「存続のためには高校生の利用を増やすしかない。バイク通学を自粛できないか」。8月に小美玉市立小川高校で開かれた鹿島鉄道(鹿鉄(かしてつ))沿線7高校の校長連絡会で、県と沿線4市でつくる「鹿鉄対策協議会」が各校長に高校生の利用促進を求めた。これに対し「時代の流れに反する。我々の存続運動はあくまで教育活動の一環で、利用者を増やす活動は大人の責任でやるべきだ」と同校教諭らが反論。行政と沿線住民の存続活動がかみ合わず、関係者の焦りは日ごとに深まっていった。
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沿線の16中・高校が02年から活動する「かしてつ応援団」(事務局・小川高校)は、署名集めや募金活動などで存続運動の先頭に立ってきた。ところが、通学定期の利用者数は03年度約39万人、04年度約35万人、05年度約30万人と減少の一途。経済性や下校時の安全面からバイク通学や親の自動車送迎が増えているためで、今年4月に実施した通学定期の2割引き実験でも発売枚数は前年同月を下回った。
沿線の高校で通学に鹿鉄を利用する生徒は約1割。同校3年で応援団長の鬼沢友里さん(17)も「自動車やバイク通学の方が安上がり」と話し、団長と学生両方の立場で複雑な心境だ。
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存続活動をする住民からは、行政に対し批判的な声が漏れる。「『地域の宝』として残そうと行政とともに活動してきた」という同応援団顧問の栗又衛・同校教諭(49)は「例えば存続のためのシンポジウムがあまり開かれないなど、大人の動きも弱かったのでは」と話す。また、存続運動のシンボルとして「ブルーバンド」を作成し、イベントなどで販売してきた「かしてつブルーバンドプロジェクト」実行委員長の菅原太郎さん(29)は、存続を前提とする活動への支援に二の足を踏む地元自治体の姿勢を「煮え切らないと感じることもあった」と振り返る。
対策協事務局の石岡市企画課は「地元商工会など多方面に働きかけてきた」というが、住民からは「どんな活動をしているかよく知らない」との声が出ている。対策協自体も、今年5月以降は休業状態だ。02年からの5年間で約2億円の公的支援を投入してきたが、存続のためには07年度からの5年間で新たに約11億円の支援が必要で、この分担をめぐり、自治体間で「腹の探り合い」(関係者)状態にあるからだ。対策協のアドバイザーだった筑波大大学院の石田東生(はるお)教授(55)は、01年に公的支援投入が決まった際、「自治体が住民を巻き込み、地域づくりの中で交通のあり方を議論する5年間にすべきだ」と指摘していた。
存続活動をするうえで行政と住民が互いに信頼感を欠き、大きな輪になれないまま5年目が終わろうとしている。
毎日新聞 2006年9月16日