2006年3月5日 茨城新聞


第4部 動くE 危機

鹿島鉄道廃線へ決断
 「短期間だが、ぎりぎりまで努力し、支援策、増収策、あるいは新たな利用促進策を検討したい」
 先月二十日、鹿島鉄道(石岡−鉾田)の存続を検討する鹿島鉄道対策協議会で、会長の横田凱夫石岡市長は厳しい表情を隠せなかった。一九二四(大正十三)年六月に開業した老舗の同鉄道が、来年三月末の廃線という危機を迎えたためだ。
 同鉄道の小野里忠士社長は席上、つくばエクスプレス(TX)開業による親会社・関東鉄道(土浦市)の業績悪化で、二〇〇七年度以降の経済支援が受けられないことを理由に、国交省に今月末、鉄道法に基づく「廃止届」を提出する方針を表明。回避するには、新たに約五億三千万円の資金援助が必要という。
 同鉄道の乗車人数は一九六七年度の年間三百一万六千人をピークにマイカーの普及などで年々減少。売り上げの三割を占めていた航空自衛隊百里基地(小川町)への燃料輸送が〇一年度に打ち切られたことも打撃となった。

 これを機に、対策協が発足。〇二年度から五年間、県と沿線自治体が約二億円、関東鉄道が約三億円の財政支援を実施したが、〇四年度の年間乗車人数は八十四万三千人にまで目減り、同年度末での累積赤字は二億五千万円を超えた。
 TXの開業は当初から分かっていたこと。「経営の見込みが甘かったのではないか」と詰め寄る首長らに、関東鉄道は苦しい台所事情を説明した。
 同社によると、常総線(下館−取手)はTX開業前のアンケートで30%の乗車人数減を予測したが、現状で23%減に踏みとどまっている。
 しかし、JRバス関東(東京)との共同運行で、年間約二十億円の売り上げのあったつくば駅と東京駅を結ぶ高速バス「つくば号」は、半減の予測に対し、70%と大幅な減少。昨年十一月には一日八十六往復を五十二往復に縮小する一方、運賃を値下げし、需要を喚起したが、「TXの定時制が浸透し、客足が戻らない」(酒寄新一総務部次長)という。鉄道と合わせた同社の本年度の売り上げは前年度比で約十七億円の減収とみている。
 「本年度は半期の影響なので赤字は回避できるが、来年度以降、数年は厳しい経営を迫られる。本体(関東鉄道)を赤字にするわけにはいかない」(酒寄次長)
 危機的状況に関東鉄道は来年度、役員十六人と全社員約八百七十人を対象に平均で15%の給与カットを断行するという。

 鹿島鉄道の沿線では、小川高(小川町)はじめ、中高十六校の生徒会で構成する「かしてつ応援団」と、石岡市の特定非営利活動法人「まちづくり会議」などが「かしてつブルーバンド実行委員会」(菅原太郎委員長)を組織。リストバンド「ブルーバンド」によるアピールや署名活動などを行ってきた。これまで約一万四千人分を集め、今月下旬に二度目の署名簿を対策協に提出する予定だ。
 今月一日、同鉄道の役員が応援団事務局の小川高生徒会などを訪ね、廃止届を提出する事情を説明した。その際、生徒たちから「沿線の街づくりと連携した存続は考えられないのか」など、再考を求められたという。
 生徒会を指導する栗又衛教諭は「県がリードして、沿線自治体とともに第三セクター方式や上下分離方式など、存続を検討できる枠組みをつくってほしい」と訴える。(第四部おわり。担当・TX取材班)