朝日新聞 2006年11月01日

今後5年間で赤字5億・湊鉄道対策協

 ひたちなか市に、茨城交通(本社・水戸市)が廃止の打診をした湊鉄道について話し合う対策協議会が31日、同市で開かれ、同交通は来年度からの5年間で計約5億1千万円の営業赤字を見込んでいることが明らかになった。
 同協議会には、本間源基市長や茨城交通の役員らが参加。茨城交通側は、今後も湊鉄道の利用者が減少することを見込んでいることや車両の老朽化対策などが必要なことから、このままでは存続は難しいとの見通しを示した。
 一方、同市が9月に同市内の6高校の生徒に行ったアンケートでは、回答のあった2817人のうち257人が、湊鉄道で通学していることがわかった。また、通学以外で湊鉄道を利用している生徒も含めた448人のうち、半数に当たる225人が湊鉄道を利用する理由について「他に利用する交通手段がないから」と答えた。

茨城新聞 2006年11月1日

茨城交通湊線 存続へ別会社も検討
2006/11/01(水) 本紙朝刊 第1社会 A版 23頁
赤字算定3億の差 対策協で会社と市
 ひたちなか市内を走る茨城交通湊線の存廃問題で、同市が設置した「湊鉄道対策協議会」(会長・本間源基市長)の第四回会合が三十一日、市役所内で開かれた。茨城交通側は二〇〇七年度から五年間で五億円を超す営業赤字になるとの見通しを示し単独での存続は困難とする一方、市側は国・県の施設整備補助などによる負担軽減で赤字額は計約二億二千万円程度まで圧縮可能と試算。現状では補助対象にならないことから、市は今後、別会社の設立や上下分離方式による存続を具体的に検討する考え。茨城交通側も検討には応じる構えを示した。
 茨城交通が提出した五年間の収支予測によると、収入は計約八億六百十五万円。利用者減少の影響で毎年、前年度比3・5%ずつ収入が減る計算だ。支出は安全対策の施設整備を実施したことを想定し、計約十三億千五百六十万円に膨らむため、差し引きで計約五億九百四十五万円の営業赤字になるとの見通し。茨城交通側は「財政支援などがない限り鉄道事業を廃止せざるを得ない」との考えだ。
 これに対し、市側は地方鉄道近代化設備整備促進事業による国・県の補助を活用して施設整備費の事業者負担を約三分の一に削減し、現状で鉄道事業に含まれている光ファイバーケーブル賃貸料を収入に含めれば営業赤字は計約二億千九百七十五万円まで改善できるとの試算を示した。
 ただ、同事業補助の対象になるには前年度の全事業での経常損失か、経常利益が前年度末の全事業用固定資産価額の5%以下の条件があり、茨城交通の経営再建計画ではこれに当てはまらない。このため、市は茨城交通と協議しながら鉄道事業単独の新会社、子会社の設立も選択肢に入れた検討を行う考えだ。
 また、財政支援に当たっては、線路などの無償譲渡を受けた上で施設整備費を市が負担し、運行を委託するといった上下分離方式などについても検討していく方針。
 対策協の中で茨城交通の竹内雄次常務は「企業の存続を最優先に考えている」として、湊線存続が難しいとの姿勢を強くにじませつつ、子会社設立に関し「提案があれば検討する」と述べた。
 一方、那珂湊地区の自治会や商工会議所などを中心に「おらが応援団」(団長・佐藤彦三郎市自治会協議会副会長)が立ち上がり、チラシ配布などを行っていることが報告された。