2006年3月31日 茨城新聞
鹿島鉄道が廃止届
来年4月1日予定
■存続へ協議は継続
石岡市と鉾田市を結ぶ鹿島鉄道(本社土浦市、小野里忠士社長)は三十日、経営悪化による安全運行の維持が困難として、国土交通大臣に鉄道事業廃止届書を提出した。廃止予定日は二〇〇七年四月一日。鹿島鉄道側は二月末、県や沿線自治体で構成する鹿島鉄道対策協議会(会長・横田凱夫石岡市長)で廃止の意向を示しており、今回の廃止届は既定方針に沿ったもの。鉄道事業法に基づき廃止一年前に提出することが定められてはいるが、取り下げも可能。対策協議会などで今後、存続に向けた協議が本格化する見込み。
鹿島鉄道は、航空自衛隊百里基地(小美玉市)へのジェット燃料輸送廃止と利用客の減少で、〇一年に存続問題が表面化。県と沿線自治体が対策協議会を設立し、〇六年度までの五年間で約二億円の公的支援を決定。親会社の関東鉄道(本社土浦市)も約三億円の支援を行っている。
しかし、自治体の今後の支援は今のところ白紙。さらに昨年夏に開業したつくばエクスプレスの影響で関東鉄道の業績が悪化、〇七年度以降の支援が打ち切られることになった。
鹿島鉄道はこうした状況を踏まえ、「毎年利用客が五万人から六万人減少し経営が悪化。施設の老朽化が進む中で鉄道事業の基本的使命の安全運行を維持することが困難」として廃止届を提出。先月末の対策協議会で小野里社長は「廃止を届け出ても即廃止ではなく、残せるものであれば残せる形を模索したい」と述べていたが、今回の廃止届については「断腸の思いでの決断」と厳しい表情で語り、明言を避けた。
石岡市役所に事務局がある対策協議会では「五年間の公的支援が継続されている中で、廃止届を提出されたのは誠に残念。廃止届イコール廃止ではない。今後も増客・増収に取り組むとともに鹿島鉄道や関東鉄道と存続を視野に入れた協議を続けていく」とする横田市長のコメントを発表した。だが、沿線の小美玉市の市長選が来月末に控えており、存続に向けた本格協議は新市長が決まった後の五月以降になるという。
■地元「予想通り」と冷静 存続運動、さらに力
鹿島鉄道の廃止届が提出されたのを受け、沿線自治体の首長や支援組織などは予想された事態とあって冷静に受け止める一方、存続へ向けて前向きな意見を寄せた。
沿線の中学・高校生徒会でつくる「かしてつ応援団」の寺内壮馬団長(小川高生徒会長)は「まだ一年間猶予があるので、これまで以上に署名や募金活動に力を入れたい」と存続運動を盛り上げる構え。
同応援団顧問の栗又衛教諭(小川高)は「予想通り。会社は精いっぱい頑張ったと思う。これからも県や自治体の支援で存続させてほしい」と語った。同鉄道が地域の財産、住民の足として残るよう同応援団として沿線住民らとともに「鉄道再生計画」を提案し、具体的な運動に取り組みたい、としている。
支援イベントに鉄道模型などを持ち込み、支援の輪を広げている鹿島鉄道レールファンクラブの副会長、大堀勝弘さん(67)=鉾田市鉾田=は「困った。地域の足として約八十年活躍してきたのに残念だ。何とか知恵を絞って存続の方法を考えてほしい」と話す。
鉾田市の鬼沢保平市長と行方市の坂本俊彦市長は、廃止届が提出されたのは残念とし、「対策協として増客増収に取り組んでいく姿勢に変わりはない」「新たな利用促進策を図り、運行の継続について協議を続けていきたい」とコメント。
一方、親会社の関東鉄道役員は「会社(鹿島鉄道)の立場として輸送密度が六百人(二千人程度が収支の分岐点)を割っていて、経営が成り立たない状況。事業者としての鉄道の役割は終わったと思う」と厳しい経営事情を明かす。その上で「廃線にしたくてしているわけではない。第三セクターや上下分離方式など、自治体などが運営していくような対策がとれるのなら協力は惜しまない」とも語った。