茨城新聞
<10> 鹿島鉄道廃線 |
2006/12/26(火) 本紙朝刊 第1社会 A版 19頁 |
![]() 存続か廃止かで揺れた鹿島鉄道(石岡−鉾田)について、沿線四市と県で構成する「鹿島鉄道対策協議会」(会長・横田凱夫石岡市長)が二十四日、存続を断念すると発表したことで、来年三月三十一日の廃線が事実上決まった。地方の民間鉄道が経営難で相次ぎ廃線に追い込まれる中、行政や市民団体が懸命に存続の可能性を探ったが及ばなかった。 鹿島鉄道(本社土浦市)は今年三月、経営悪化により安全運行の維持が困難として、国土交通大臣に来年三月末での廃止届を提出。これを受けて同協議会は存続を前提に協議を続けてきた。 当初は九月ごろまでに結論を出す予定だったが、来年度以降も運行を続ける場合、五年間で十一億円の財政支援が必要とされ、この膨大な資金援助をめぐって協議が難航。十一月に入り、やっと対策協議会は五年で六億五千万円を上限とする財政支援を継続することで合意。鹿島鉄道側に提示したが、「支援を受けても経営は難しい」と廃線の意思が固いことから、同鉄道への財政支援を本年度で打ち切ることを決めた。 その上で存続の可能性を探ろうと、路線の運行を引き継ぐ事業者を公募。市民団体の「鹿島鉄道存続再生ネットワーク」と東京の企画会社「トラベルプランニングオフィス」の二団体が応募したが、審査の結果、いずれも応募条件を満たさず不採用とした。これで最終手段として残されていた「存続への道」が断たれた。 存続運動は、沿線の高校生らでつくる「かしてつ応援団」や「かしてつブルーバンドプロジェクト」を中心に繰り広げられた。署名集めやイベントの開催、鉄道再生の提言などさまざまな形で行政や沿線住民に熱く存続を訴えた。 しかし、五年前に同協議会が支援策として公的資金投入の方針を決めた際、鉄道側から既に「輸送密度が低く、支援によっても黒字転換は困難」と厳しい見通しが示されていた。過去五年間の公的支援は「延命措置」でしかなかった。 「まさか廃止届を出すとは思わなかった」(自治体関係者)と、行政と鉄道の両者が意思の疎通を欠き、鉄道の将来を見据えた抜本的な対策を怠ったツケが今回の廃線につながったともいえる。沿線住民の関心も低く、利用者の減少に歯止めがきかず「廃線やむなし」の声なき声が、厳しい財政事情を抱えているとはいえ、自治体の存続断念を促す結果となった。=おわり 【写真説明】 存続か廃止かで今年一年揺れた鹿島鉄道 |