2006年3月5日 朝日新聞

鹿島鉄道でバンド列車

2006年03月05日

 廃止の危機にある鹿島鉄道で4日、列車内でポップスバンドが演奏する「バンド列車」が石岡―鉾田間を往復した。鉄道保存活動を続けている「かしてつブルーバンドプロジェクト実行委員会」(菅原太郎委員長)が主催。約30人の乗客が、音楽に合わせ片道27・2キロの小旅行を楽しんだ。(岡田玄)
 「列車の中での演奏なんて初めてですよ」。バンド「サウンドWrap」リーダーの長谷川久さん(60)は言う。
 ポップスを中心に演奏するバンドのメンバーは、玉里村の工業団地内にある樹脂加工会社「クレハプラスチック」の社員ら7人。1981年に結成した。メンバーのほとんどが沿線住民。中には、通勤に使っている人もいる。
 板張りの車内にトロンボーンやサックス、ギターなどの音色が響く。この車両は1937(昭和12)年につくられた。同鉄道によると、営業している車両としては日本で2番目に古いという。

 ♯鉾田行きの電車は
 いつも夢の中にあって
 流れる空へ
 流れる雲へ
 私を連れていく

 鹿島鉄道をモチーフに歌ったオリジナル曲の「鉾田線」。どこか懐かしい沿線の風景や人との出会いが思い描かれている。歌詞カードを手にした乗客も、一緒に口ずさむ。ガタンゴトンと、車両も線路もリズムを刻む。
 「景色にあった、いい歌だったよね」と、つくば市から来た水野敏夫さん(64)。岩間町の羽持未咲さん(18)は、高校の後輩に誘われて乗車した。アルバイト先の石岡市内のレストランに、鹿島鉄道で食べに来るおばあさんがいるという。「“かしてつ”がなくなると、来られなくなるから寂しいって。何とか残せないかな」
 午前10時29分に石岡駅を出発した2両編成の列車は、鉾田駅で折り返し、午後0時47分、石岡駅に戻った。
 実行委の菅原さんは「乗客だけでなく沿線の人にも、列車でもコンサートができるんだと思ってもらえたと思う。興味を持ってもらえたと思うので、今日は成功でした」と笑顔だった。
 同実行委では、19日午後1時半から玉里村総合文化センターコスモスで「鹿島鉄道を応援するメッセージ発信会」を行う。問い合わせは県立小川高校生徒会内の事務局(0299・58・1403)へ。