2009年8月5日 茨城新聞

旧鹿島鉄道の2車両 温泉施設で動態保存

鉾田発展のシンボルに

 2007年3月に鹿島鉄道が廃線になって以来、市民団体により旧鉾田駅跡地で保存されていた車両2台が、鉾田市の温泉施設の敷地内で動態保存されることが、4日までに決まった。市によると、廃線となった鉄道車両を動かせる状態で保存するのは、関東とその近辺では例がないという。

 動態保存が決まったのは、市民団体「鉾田駅保存会」が所有する車両「キハ601」と「KR−505」。鹿島鉄道の廃線までキハ601は、一般旅客営業に運用される車両としては日本最古で、戦前に製作された唯一の現役気動車だった。
 6月に保存会から車両の寄付について申し入れを受けた同市は、旧鹿島鉄道坂戸駅に近い市の温泉施設「ほっとパーク鉾田」の敷地内に車両2台を移設、線路上で動かせる状態で保存することを決定。7月の臨時市議会で関係予算(798万円)の議決を得た上、先月末に保存会に寄付受け入れを通知した。
 市では、11月にも車両2台の寄付を受け、年内にも移設を完了させたい、としている。
 移設されるのは、ほっとパーク鉾田の南側敷地。50メートルほどの線路を敷き、その上に車両を設置し、動態保存する。
 ただ、線路延長が短いため、車両のエンジンをかけ車輪を数メートル前後に動かせる程度の最低限の動態保存となる。
 同市では、「昭和の鉾田地域の発展のシンボル」として展示・公開することで「次世代に鉾田地域の歴史を継承するとともに、鉄道関連のイベント開催などでほっとパーク鉾田の利用者増にもつなげたい」としている。
 保存会は、鉾田駅跡地を中心とした土地に交通鉄道公園を整備し、そこで車両を動態保存する構想をもっていたが、鹿島鉄道の理解が得られず、構想実現を求める請願(保存会の前身団体『ネバーギブアップかしてつ』が提出)も昨年3月の市議会で否決されたことなどから、この構想を断念。鹿島鉄道からは来年1月末までに鉾田駅跡地からの立ち退きを迫られていた。
 そこで次善の策として、市有地での動態保存について、市と協議を続けてきた。
 保存会は、「移転後もボランティア団体として従来通り車両の機能維持、保全などの保存活動を責任をもって行っていく」としている。

【写真説明】
移設が決まった「キハ601」、後方は「KR−505」=鹿島鉄道旧鉾田駅跡地