2008年3月24日 常陽新聞

鹿島鉄道の車両を私費で保存
小美玉に記念館が完成
昨年3月末で廃線となり間もなく1年が経過する鹿島鉄道の存在の証しとして、車両3両を静態保存する鹿島鉄道記念館(小美玉市川戸)が小美玉市川戸に完成し、23日、鉄道保存運動に携わった関係者や報道機関に公開された。管理運営するNPO法人を早急に立ち上げ、会員から募る会費をはじめ、一般公開時に維持協力金を募るなどして運営資金を確保する計画だ。

記念館を完成させたのは鹿島鉄道保存会=代表・加藤三千尋さん(38)。加藤代表は東京都に住む薬剤師で、健康食品や化粧品の企画、販売などを手掛ける会社も経営している。

記念館では車両3両を線路上に並べ、館内には玉里駅上りホームにあったログハウス風の待合室も移設。かしてつ応援団のペイントがそのままに保存されるほか、信号機やプレートなど、鉄道ゆかりの品々も保管される。

保存する車両はキハ714とKR501。加えて鉾田駅に残されていた3両の内のキハ431の計3両。

同保存会によると、キハ714は元夕張鉄道のキハ251でもあり、1953年に新潟鉄工所で造られた。北海道初の液体式ディーゼルカーで、鹿島鉄道当時は唯一、車掌の乗り込む非ワンマン車として人気を集めた。

KR501は89年に同鉄工所で造られたレールバスで、鹿島鉄道が自社発注した第1号。宅地開発に伴い誕生した石岡南台駅開業と同時に導入された。2005年5月から「かしてつ応援団」のラッピング車両「ガンバレ!かしてつ号」となり、廃線間近の07年1月からは「ありがとうかしてつ号」として最後を飾った。

キハ431は1957年に東急車輛で造られ、加越能鉄道加越線から譲渡され、グリーンの塗装は旧三井芦別鉄道の塗装という。同型のキハ432が小川南病院敷地にある。

2006年までの存続運動当時、加藤さん自身も加わった「鹿島鉄道存続再生ネットワーク」を中心として、廃線後、行方市の浜駅を拠点に200bほど線路を購入し、1、2両の気動車を動態保存する「霞ケ浦市民鉄道構想」を企画。加藤さん自身が5000万円の出資を予定していたが、鹿島鉄道側は「軌道敷の切り売りは資産価値を下げる」として応じなかったためとん挫し、最終的に記念館の整備に落ち着いた。

当初はキハ431以外の2両を保管する計画だったが、鉾田駅での交通公園構想が資金不足で行き詰まり、同駅に残った3両の解体が決定的になったことから、1両を追加購入して記念館に加えた。

今後は設備資金面を加藤代表が担当。維持管理はNPO法人鹿島鉄道保存会を立ち上げる計画。当面、関係者以外は非公開とし、将来、年数回の一般公開を計画しているほか、近隣の小学校社会科授業の校外学習にも対応することにしている。

加藤代表は「存続運動のメンバー有志で廃線後について話し合ってきた。鹿島鉄道が沿線地域の足として歴史的使命を果たしてきた史実を後世に伝えたいという思いから、本来は自治体や鉄道会社などで行うべき事業ではあるが、誰かがやらなければ実現できない現実を踏まえ、その共通認識に立って記念館を構想した」と話した。