2007年09月28日 朝日新聞
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夕方になると通学や買い物帰りの乗客でにぎわう湊線=那珂湊駅で |
赤字に苦しむ茨城交通湊線(勝田―阿字ケ浦、14・3キロ)の存廃問題で、茨城交通(資本金3億円)と地元のひたちなか市、県の3者が27日会談し、路線の存続を決めた。同社が鉄道部門を切り離し、来年4月に新設する第三セクターに事業を移す。新会社の資本金は未定だが、市は市民から寄付などを募った上で、同社とほぼ対等に出資する。公費負担が軽いとの見通しから存続を決めた。ただ、黒字転換のめどは立っていない。
湊線は最盛期の約40年前に年間350万人の利用を記録した。しかし、06年度は70万人にまで減った。足元では4〜8月の利用者が30万3千人で前年同期比0・2%増となり、歯止めの兆しもあるが、財務状況は年数百万〜数千万円の営業赤字が続く。茨城交通は08年度から5年間の赤字を約5億円と見通す。
赤字縮小のため、茨城交通は毎年約4千万円の収入のある光ファイバー事業を新会社に譲渡する。また、現在は単線の勝田―那珂湊駅間に行き違い設備を設け、40分間隔の運行ダイヤを短縮。朝夕の混雑時などにJR常磐線への乗り換えが自由になり、利用者増が期待できるという。
これらの計画を基に市などが再試算すると、新会社の5年間の赤字は約1億1千万円まで圧縮できる見込みだ。
このため3者は「日立電鉄や鹿島鉄道と比べ、深刻な赤字体質ではない」(鈴木欽一県企画部長)などとし、路線存続を決定した。県は市の出資の3分の1を負担する。
05年3月に廃線になった日立電鉄線は、存続させる場合、10年間で21〜35億円の支援を要すると試算。今年3月廃線の鹿島鉄道は沿線4市の負担額が計2億円に上り、両鉄道とも存続を断念した経緯がある。
また、湊線は距離数が14・3キロと短く、安全性を確保するための枕木のコンクリート化を93%の区間で実施済みだ。中古での車両更新によって、当初6億円必要とされた設備投資費も5億4千万円に抑えるという。
ただ、この設備投資費は国の「鉄道・軌道近代化設備整備費補助制度」などを利用し、国と県がそれぞれ3分の1を補助。残る事業者負担分も市が全額支援するなど、出資以外にも納税者負担が重くのしかかる。
このため「これだけの支援をして、5年たった時にさらに厳しい状況に追い込まれていては困る」(県交通対策室)との懸念も出ている。