2007年9月12日 朝日新聞

鹿島鉄道、有終の黒字 鉄道ファンで乗客増

 3月末に廃線となった鹿島鉄道(石岡―鉾田、27・2キロ)の昨年度の経常損益が、同社の決算で約4100万円の黒字だったことがわかった。鹿島鉄道は関東鉄道と分離して以来、ほぼ毎年赤字だった。「有終の美」を飾った背景には、廃線を惜しんで全国から駆けつけた「鉄道ファン」らによる定期外収入の大幅増があった。

 05年度の経常損益は約1300万円の赤字だったが、昨年3月ごろ、1年後の廃線が報道で伝えられると、現役最古の気動車が走るローカル鉄道をひと目見ようと全国から客が訪れた。記念乗車券などのグッズ販売も売り上げに拍車を掛けた。

 その結果、06年度は、通学の中高生などふだんの利用客を除く定期外の乗客が05年度比約11万3千人増の約45万4千人に。輸送人口全体も、同約6万人増の83万4千人となり、経常損益も、他事業の収入で黒字となった88、89年以来の黒字を達成した。鹿島鉄道の担当者は「こんなに大勢の方に乗りに来て頂けるとは思いもよらなかった。無事に最終日を迎えようと、みな無我夢中だった」と振り返る。

 鹿島鉄道の経営悪化に伴い、02年度から関東鉄道(本社・土浦市)や沿線4市(石岡、小美玉、行方、鉾田)や県などが、赤字の補填(ほ・てん)や設備投資などとして補助金を支給していたが、このうち4市が最後の補助金として、昨年度予算に計上していた計2200万円は支払わずにすむことになった。

 それでも、最も多い約760万円を計上していた石岡市の担当者は「廃止が決まったせいで乗客が増えたので、単純に喜べない」と複雑そうだ。