2007年5月19日 朝日新聞

「半値運賃」でTXに対抗 高速バス

格安回数券を発売した高速バス=つくば市で

 順調に乗降客を伸ばすつくばエクスプレス(TX)に乗客の7割を奪われたつくば―東京駅間の高速バス。運行する関東鉄道(本社・土浦市)とJRバス関東(本社・東京)は誘客策に懸命で、ついにTXの半額に迫る格安運賃を打ち出した。しかし交通渋滞による遅れという弱みは残り、効果は未知数だ。(清水康志)

 関東鉄道によると、05年8月のTX開業前は、1日86往復の高速バスが運行し、「陸の孤島」だったつくばと都心をつなぐ主要交通として好収益をあげていた。

 TX開業に合わせ、つくば市内の停留所を増やし、運賃も1250円からTXの競合区間(つくば―秋葉原間)と同じ1150円に下げたが、秋葉原まで快速で45分のTXにはかなわず赤字路線に転落。乗客の7割を奪われ、開業3カ月後には1日52往復への減便を迫られた。とくに東京行きの上り便の乗客は8割以上も減り、現在の平均乗客は8人。平日昼間は0〜2人も珍しくない。

 TXから乗客を何とか取り戻したい同社は4月下旬、運賃をTXの約半額にした「東京トク割回数券」(3枚組み1900円)の発売に踏み切った。乗客がとくに少ない上り便にだけ使える切符だが、片道633円の格安運賃を実現。現行の回数券(5枚組み4800円)や割引切符(1週間以内の往復で1700円)より片道200〜300円ほど安い。同社は「空車のまま東京に行くよりいい。下り便の利用にもつながる」。

 トク割回数券は1日平均35セット売れ、客足もわずかだが伸びている。だが固定客が買っている例が多く、まだ収益的な効果は薄いという。

 運賃は安くても、高速バスには交通渋滞という壁も残る。時刻表上の所要時間は上り便85〜105分、下り便65〜70分だが、上り便は頻繁に10〜20分遅れ、利用者は「2時間の余裕をみて乗っている」といい、急ぐ人には使いづらい。

 同社は「何とか今の便数を運行するよう頑張りたい。だが、これで効果がなければ、減便などダイヤ改定も検討せざるを得ない」としている。