2007年05月17日
国土交通省関東運輸局と県は6月中旬から、存廃問題が浮上している茨城交通湊線(勝田―阿字ケ浦、14・3キロ)で、線路と道路の両方を走ることのできる「デュアル・モード・ビークル(DMV)」の導入の可能性を探る共同調査を始める。DMVは、ローカル線存続の切り札として全国各地で期待を集めているが、実際の導入には課題も多い。(久保智祥)
DMVは、JR北海道が開発し、4月から1年間、オホーツク海沿いの釧網線で試験的に営業運転を行っている。踏切などに簡単な設備を設置すれば、10秒程度で、線路と道路の行き来が可能で、車両価格も従来の鉄道車両の6分の1以下の約1500万円〜2千万円程度で済む。定期検査の費用も約100万円と4分の1で、燃費も1リットルで約6キロと鉄道車両と比べて約4倍優れている。
これらの利点からDMVは、ローカル線存続の切り札として、静岡県や熊本県などでも導入の検討が進んでいる。県も今春、DMVの湊線への導入可能性を調べることを決めた。関東運輸局も、県内の地方鉄道をモデルに公共交通の活性化を調査することから、DMVのほか、鉄道、バスも含め調査を連携して行うことになった。
まず運輸局が、県内の地方鉄道の現状分析と沿線の公共交通機関の現状などを把握。県は、自家用車の利用動向や鉄道など公共交通へのニーズ、DMVの導入についての意向などを住民アンケートで調べる。
これらをもとにDMVや鉄道、バスなどの費用対効果を分析し、学識経験者などからなる検討会で実現可能性を探る。県は地元のひたちなか市とも協力、DMVを想定した走行ルートの選定や、線路から道路に切り替える場所の選定もする。
湊鉄道対策協議会では、阿字ケ浦駅から国営ひたち海浜公園や大型商業施設などを経て、勝田駅を結ぶ案や、那珂湊駅から、那珂湊のおさかな市場や、アクアワールド県大洗水族館を結ぶ案などが出ている。県交通対策室は「回遊性を持たせるなどして利用者の利便の向上を図り、観光客の発掘など利用者増につながる可能性は十分ある」と話す。
一方で、車体の床が低く、現在の湊線のホームの高さでは対応できないことや、定員が16人と少なく朝夕の混雑などに対応できないなどの問題も多い。また、DMVは重量が6トンと、通常の鉄道車両(約40トン)より軽いため、車輪についたさびなどでも、信号やポイントを動かす電気信号がうまく流れない可能性があるという。県では新たに必要と見込まれる投資経費も含めて導入を検討する。
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DMV(デュアル・モード・ビークル) 線路と道路の両方を走れる車両。JR北海道が開発した車両はマイクロバスをベースにしており、道路はタイヤで走り、線路に入ると、格納していた鉄輪を降ろし、タイヤの前輪を持ち上げて走行する。駆動には、後輪のタイヤを使う。