2007年5月10日 茨城新聞

湊線存廃問題 
通勤用の駐車場整備 赤字補てん検
2007/05/11(金) 本紙朝刊 総合1面 A版 1頁
ひたちなか市対策協
 ひたちなか市内を走る茨城交通湊線の存廃問題で、同市が設置した「湊鉄道対策協議会」(会長・本間源基市長)の第七回会合が十日、市役所内で開かれた。この中で市側から、四月以降、分社化や赤字一部補てんの検討など存続に向けた具体的協議が市、県、同社で行われている現状が報告された。また、利用促進の一環として、市は六月から同線那珂湊駅近くの市未利用地を活用して通勤定期利用者を対象とするパーク・アンド・ライドを実施することを明らかにした。
 同協議会は約三カ月ぶりで、茨城交通が年度末の国に対する同線廃止届提出を当面見送ってから初の開催。本間市長は「廃止届は先送りにすぎず状況は変わっていない。ただ、四月からは存続に向けた具体的な協議に入れた」と述べ、同社が前向きな姿勢に転じつつあるとの見方を示した。
 市によると、国、県、市の設備投資補助を受けるために現状では不可欠な分社化や、赤字が出た場合の行政による一部補てんの可能性などについて協議が続けられている。この中で約三億円の鉄道資産に根抵当が設定されており、さらに分社化の際の資産譲渡の事務経費として約一億円必要なことが新たに分かった。
 市、県は今後、同社の経営努力に基づく収支計画の見直しや根抵当の処理、設備投資額の削減、年約四千万円の光ファイバーケーブル賃貸料の扱いなどを整理し、秋口をめどに支援策の枠組みをまとめたい考えだ。ただ、現状で方向性が固まっておらず、予断は許さない状況だ。
 利用促進策として、市は那珂湊駅近くの市有地に無料の駐車スペースを整備し、パーク・アンド・ライド方式で通勤定期利用者の利便性向上を図る。湊線通勤への切り替え環境を整えるのが狙い。
 一方、地元の「おらが湊鐵道応援団」(佐藤彦三郎会長)はこれまでに千六百四十人を超す会員が集まり、那珂湊駅内に活動拠点となるコーナーも設置。五つの専門委員会を立ち上げ利用増への活動を本格化させる。
 湊線の二〇〇六年度の利用状況は約七十万人。前年度より約二万人減少したものの、減少率は過去数年に比べ鈍化。三−四月の利用者数は前年同月を上回り、利用減に歯止めがかかりつつある。

毎日新聞 2007年5月11日

湊線の存廃問題:パーク&ライド実験で利用増を−−対策協

 茨城交通湊線(勝田〜阿字ケ浦、14・3キロ)の存廃問題に関する県や周辺自治体などの対策協議会が10日、ひたちなか市役所であり、今年度の事業計画を決めた。存続には利用客増加が欠かせないとして、那珂湊駅で無料の駐車場を確保し、マイカー通勤の利用を促す「パーク&ライド実験」を6月から始めるなどの内容を盛り込んだ。

 パーク&ライドは、駅近くの市有地に車約30台分を確保し、列車通勤客が無料で利用できる。好評なら、駐車台数を順次増やす。また、沿線周辺の自治会や商店会、企業向けに、無料サービスの回数を増やした専用回数券を販売。ひたちなか市内の小・中学校を対象に、湊線を使った社会科見学会も実施する。

 一方、協議会では、昨年度の利用者数は70万828人で、減少率が05年度の7・4%から2・8%となったことが報告された。廃止届を出す最終期限とされていた3月の定期外の利用者が約2万6500人で、前年同月期に比べ、約3800人増えた。同会事務局は「活動の成果が表れたと考えているが、まだ見通しは厳しい」と話している。【栗本優】

2007年5月10日 讀賣新聞

湊線分社化働きかけ
ひたちなか市など支援条件確保のため


 存続の危機にある茨城交通湊鉄道線(勝田―阿字ヶ浦)の運行を財政面から支援するため、ひたちなか市は今年4月から、県と協力し、茨城交通に鉄道部門の分社化を働きかけていることが分かった。10日開催された湊鉄道対策協議会(会長・本間源基ひたちなか市長)で本間市長が明らかにした。9月をめどに分社化の可否について茨城交通に結論を出してもらい、具体的な支援策を固める。湊線の運行部門を分社し、新会社が設立されれば、2008年度から支援を実施したい考えだ。

 湊線の分社化は、国や県などから財政支援を受ける条件を満たすための措置。茨城交通は、金融機関の支援を受け経営再建中のため経常利益を出さなければならないが、国や県の代表的な補助金である「地方鉄道近代化設備整備促進事業」は、経常損失を出している事業者が対象。経常利益を出している茨城交通は補助の対象事業者にはなれない。ただ、湊線の運行にあたる鉄道部門だけをみると、2007年度から5年間で約5億円の営業損失が見込まれている。鉄道部門を分社化し新会社とすれば、財政支援が可能となる条件を満たすことから、市は茨城交通に分社化を提案している。だが分社化には、湊線の収支計画の改善や資産移管の方法、従業員の確保など様々な課題もある。市、県、茨城交通は9月まで週1回のペースで協議を行っていく予定だ。