2007年4月14日 讀賣新聞

廃線・鹿島鉄道、レール守れとパトロール…仮想敵は金属盗

金属盗からレールを守るため、パトロールする監視員


金属盗からレールを守るため、パトロールする監視員 

3月末に全線で営業を終えた茨城県の私鉄「鹿島鉄道」(石岡―鉾田駅間27・2キロ、本社・土浦市)が、廃線になった鉄製レールを、多発する金属盗から守るためパトロールを続けている。

 営業不振から廃線を決めた同社にとって、高値で換金できるレールは貴重な財産。監視要員による昼夜の見回りを、当面は続けるという。

 1924年に営業開始した同線は、通勤通学の足などとして親しまれたが、利用者の減少などから廃線となった。レールは4月から、重機を使って撤去に取りかかっている。ただ、全線のレールを撤去するには3年ほどかかる見通しという。

 茨城県内では、沿線地域を含めて金属盗が多発。県警が把握するだけで、被害は主に火の見やぐらの半鐘が12市で計38個(410万円相当)、道路の側溝ふたが18市6町で計1027枚(840万円相当)に上る。さらに、同鉄道沿線では水田脇の蛇口や電線も盗まれている。

 鉾田市内の古物商によると、中古の鉄は1キロ・グラムあたり10〜30円で取引されており、「2年前に比べ、2倍ほどの価格で売買されている」という。鹿島鉄道は、レールの撤去費用の一部を、レールの売却益で賄う考えで、レールが盗まれると、その方針に支障をきたすため、「万一のことがあっては」と厳重に警備することになった。

 防犯対策として踏切や駅にロープを張り、立ち入り禁止の札を掲げたうえ、「一番効果的なのは人によるパトロール」と、メンテナンス会社に監視を委託。毎日、3人が約9キロずつを分担し、全線を巡回する。夜間は別の業者が警備し、地元警察署も駅などの見回りにあたっている。

 鹿島鉄道では当面、パトロールを続ける方針で、「台所事情が苦しいだけにレールは貴重。人件費もかさむが、盗難は許さない」と話している。

(2007年4月14日14時30分 読売新聞)